本番前の舞台裏
- Kai Syoujikimonono
- 2023年4月12日
- 読了時間: 1分
チームSS 杉野雄太

我々が劇団ACTに在籍していた頃、まず初めに先輩方から教わったことは、舞台に立つことの恐ろしさだったように思います。
とてつもなく強い気持ちで臨まなければ、お客さんに喰われてしまう。客を喰うか、それとも喰われるか?まさにデッド・オア・アライブの世界だと叩き込まれました。
それゆえ、本番前の舞台裏というのは、一種独特な緊張感が漂っていたような気がします。
客待ちの音楽と薄暗い照明の下、出番を待つ役者達はプレッシャーに押し潰されそうになります。
それに抗おうと音楽に合わせて踊る者、舞台裏をひたすら徘徊する者、瞑想をする者、暗幕の隙間から客席を見ている者、客に喰われてなるものかとお互いに頬を張り合う者たち。等々
牙を隠し、息を潜めた若者たちの確かな息づかいがあったように思います。
そこはある意味、本番の舞台よりもリアルな空間でした。
ジェットコースターの頂上に至った時のような、もう決して逃れられない強烈な恐怖と観念、同時にワクワク感もはらんだ、あの独特の緊張感は、その後の人生のどこに行っても味わえておりません。
そんな懐かしい感覚を、今もどこかで探しているような気がします。
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