台本のこと
- Kai Syoujikimonono
- 2023年3月18日
- 読了時間: 3分
僕がACTにいた頃はパソコンもそれほど普及していませんでした。すくなくとも大学生たちの間では。スマホもまだまだ先の話で、ポケベルも現役でしたし、「いけてるやつらはPHSを持ってる」って具合でした。なもので台本は手書きです。A4ルーズリーフを横向きにして縦書きで書きました。僕は救いようのない悪筆なので劇団員から「読めない」と言われたことは二度や三度じゃききません。「田中。これなんて書いてあんの?」って。本読みの前にまず全部とおして僕が音読して読み仮名をふる」という時間が必要でした。本当に申し訳なかったです。書いていてテンションが上がってくると余計に字が乱れる、というかもう爆発するような感じになって、罫線飛び出して。僕の台の頃は「劇作家が演出もする」のがデフォルトでしたので、気遣いすることもなくト書きも細かく書いてましたが、それ以前に「字の乱れ方」「大きさ」に演出意図が込められてましたね。過剰に。それはそれは過剰に。三行分の大きさの字で「ゆるさんっっっ!!!!」とか書いてあるわけですから。もちろん僕だけではなくて誰が台本書いても手書きでした。(他の学生劇団の台本見せてもらって、それが手書きじゃなくて活字になってるものだったりすると「おぉ〜!」ってびっくりしてたものです。)手書きの文字には体温があって、僕ほどじゃなくても、その人がどんな感じでこのシーンこのセリフを書いたのか?というのがコピーしたものからも伝わってきたように思います。横書きで書かれる方もいたし。イラスト入りとかもあったなぁ。その意味で「手作り」というか「オーガニック」というか、そんな気がします。良し悪しではなくて、そういう「効率の悪いこと」をする時間的、気持ち的余裕が僕の大学時代にはあったということでしょう。
今日ではもう、作劇の現場ではスマホで打ってそれをLINEやメールで共有しますもんね。いやはや…。
その後、ACTではなかったと思うのですが4回生ぐらいのときからやっとこさワープロを使い始めました。父のお古の文豪miniでした。

「じゃーじゃーっ、じゃっじゃらー」
って、この子、ものすごい音がするんです。プリントアウトする時。あの音はいまだに耳にこびりついてて多分一生忘れない。
「じゃーじゃーっ、じゃっじゃらー」
で一行ずつプリントアウトしてくんです。多分「らー」の時に行頭にカートリッジが戻りつつ紙を一行分上にあげてたんだと思います。
多分3年前、娘が中学入った時に増えすぎた家の荷物を整理したんですが、その時に全部捨ててしまったんです。台本。手書きのも、文豪miniのフロッピーディスクも。こんなイベントをするなら残しておいてもよかったですのにね。「出演した作品の台本は全部取ってある」って俳優さんも少なくないですね。僕もデータの台本はわざわざ捨てることはしませんが、紙やフロッピーに入ってた台本は一切手元に残っていません。
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